所信表明
(はじめに)
昨年12月20日に執行された東久留米市長選挙で、多くの有権者のご支持をいただき、第7代東久留米市長に就任させていただくことになりました。いま、ここに立ち、あらためて市長という職の責任の重さを痛感しているところであります。
いま日本は、国政においては昨年8月の総選挙の結果、戦後長く続いた自由民主党単独ないし自由民主党を中心とする政権から、民主党を中心とする政権への交代が行われ、新たな模索が行われつつあります。しかし、経済面においては、2007年10月を景気の山として、景気後退局面に入り、2008年9月のリーマン・ブラザーズショック以降、金融不安が世界的な金融危機へと発展し、世界同時不況と呼ぶべき事態に至りました。
その結果、日本経済の状況も一変、企業部門の急速な悪化が続き、雇用情勢は有効求人倍率が急速に悪化し、賃金・特別給与の減少、そして個人消費の減少というデフレスパイラルに陥っております。
国の税収も大幅に減少し、税収を大幅に上回る多額の国債発行で予算編成せざるを得ない事態に立ち至っており、脆弱な税収構造の下にあるわが市のような地方交付税交付団体は、少なからぬ影響を受けるものと考えられ、今後の市政運営は極めて厳しい局面に立ち至っているものと認識しております。
したがいまして、市民の皆様方及び市議会の議員各位のご理解とご協力なくしては何事もままならないものと考えます。さきの市長選挙に際しては、それぞれの立場の違い、主張の違いがありましたが、市議会の議員各位におかれましては、市民のため、東久留米市のためという1点でご協力賜わりますようお願い申し上げます。
(私の理想とするまちづくりの考え方)
さて、私は、選挙を通じて「歩いて暮らせるまち=コンパクトシティ東久留米」という私の理想とするまちづくりの考え方を市民の皆様にお示しいたしました。この考え方は向こう4年間の任期中、私の市政運営の根本に据えてまいる所存であります。そして、この考え方を具体の施策を通じて展開していくに当たりましては、情報公開、市民参加、市民との対話による合意形成の徹底に努めてまいりたいと考えております。
それでは、「歩いて暮らせるまち=コンパクトシティ東久留米」というまちづくりの考え方を5つの柱に分けてご説明し、所信の一端の表明とさせていただきます。
(市民参加と市民対話でともに歩むまち)
1つ目の柱は「市民参加と市民対話でともに歩むまち」であります。
これは、市政を運営していく際、市の将来に関わる事柄を決定したり、地域の課題に関わる計画の策定に当たっては、市民の参加を保障し、市民と対話を通じて合意形成に努めるというものであります。
私は、市民こそが自治の主体者であると考えております。このために、情報公開をいま以上に徹底し、説明責任を果たすこと、及びタウンミーティングを定期的に、あるいは必要に応じて開催し、市民との対話の機会を持つことを市政運営の前提に据えて、市民参加を保障するとともに、市政運営の基本を定める条例の制定も視野に入れてまいります。
このようにして市民自治の市政を実現し、地域の絆を再生し、市民の皆様とともに新しい公共を創ってまいりたいと考えております。
なお、前市長の下で進められてきたイオン立地誘導については、都市計画上の一定の手続きは進んできておりますが、予定されている地区計画区域内の権利者や周辺住民を初め、市民の皆様の中に反対する意見があります。私は、市民参加と市民対話でともに歩むという観点から、計画の見直しを主張し、市民の皆様方のご支持をいただいたものと受け止めております。こうしたことに鑑み、いまここで一旦立ち止まって、周辺住民をはじめとする関係者のご意見を伺うなど、調査・検討を進めてまいります。
(賑わいと安心のあるまち)
2つ目の柱は「賑わいと安心のあるまち」であります。
賑わいと潤いのあるまちをつくることが今ほど求められている時はありません。いのちを育み、安心して暮らしを営むためには、そのための仕組みづくりが必要です。私は、高齢化率21%を超えた超高齢社会に対応する地域の形成のため、地域商店街への支援を通じて、歩いて移動できる地域を生活圏として成立させること、このことを大切にしていきたいと考えております。
そのための1つとして、地場産業の育成、循環型の地域づくりを目指したいと考えます。農業は、わがまちの文化の源でもあります。農業者など関係者の理解を得つつ、農地の保全、そこで営まれる都市農業を育成するとともに、体験型農園の推進など、市民が農業とふれあう機会を増やせる施策を検討してまいります。また、商工業関係者との連携をいままで以上に緊密にしながら、商店街の活性化にも努めてまいります。
そして、農・商・工の連携によって、地場産業の育成、循環型の地域づくり、地産地消の仕組みを作り上げたいと考えております。
2点目は、子育て・福祉・医療施策の充実であります。
私は、生活する市民が人生において誰もが直面する場面に適切な行政サービスを提供し、みんなで支え合って安心して暮らせるまちにしていきたいと考えております 今日、経済不況等を背景として必要性が高まっている保育所の待機児ゼロを目指す取り組みを始めとする子育て支援、小児医療・周産期医療の充実は、次の時代を担う市民への投資でもありますので、できる限りの方策を講じてまいります。
また、超高齢社会にあって、現役を退いた人々が人としての尊厳を確保しながら人生を全うできるよう、介護予防、地域包括ケアサービスの充実を始め、必要な高齢者福祉、医療を提供してまいりたいと考えております。
3点目は、安心・安全なまちのための仕組みづくりであります。
市民の皆様が安心して暮らしを営むことができることは、必要にして最低限の行政目標だと考えます。そのためには、公共施設の耐震化のほか、市民の皆様のご協力を得ながら地域防災、防犯対策を充実させ、そして、交通の利便性を高める方策も講じる必要があると考えます。また、平穏な市民生活を脅かす恐れのある施設建設を巡る紛争を予防するための方策等を研究してまいります。
(水とみどりの保全、自然との共生のまち)
3つ目の柱は「水とみどりの保全、自然との共生のまち」であります。
東久留米市は、自然の地形的条件と先人たちの努力により、湧水が数多く保たれ、数条の流れが形成されています。とりわけ落合川と南沢湧水群は平成の名水百選に選定された市民共有の宝であります。また、屋敷林や緑地保全地域と残された農地が醸し出す風景は、人々にふるさとを感じさせる大切なものと思います。今を生きる私たちには、湧水・清流、そしてふるさとを感じさせる風景を作り出している農地や樹林地を次の時代に引き継いでいく責務があると考えております。そのための必要な施策を一層推進するには、「湧水・清流保全都市宣言」を行うことも意義あることと考えております。
また、地球的課題となっている温暖化防止のために、市レベルで為すべきことを為し、並びに市民が安心して生活できる環境を保障する施策を進めるべきと考えております。このためには、市民の皆様一人ひとりの意識と行動が必要になります。さらなるごみ減量、リサイクルの推進もその一つであります。市民の皆様とともに環境を重視したまち東久留米を創り上げてまいります。
(平和と人権を尊重するまち)
4つ目の柱は「平和と人権を尊重するまち」であります。
今日の日本において平和を希求し、一人ひとりの人権が尊重されることは、行政運営だけではなく、すべての面における当然の前提であります。
地方自治体ができる平和を希求する方策として、平和市長会議への加盟も視野に入れ、地域からも核廃絶を訴え、平和事業を推進してまいります。
また、障害者、DV被害者など、いわゆる社会的弱者に光を当て、その自主的な自立を支えること、また、自主的な努力によって自立できない人に対する支援を行うことは、社会的セーフティーネットとしての行政の役割でもあります。私は、すべての人々が互いの存在をかけがえのないものだと感じ合えるまち、市民一人ひとりが「居場所と出番」を見出すことができ、役に立ち合えるまち、人と人が支え合って生きていけるまちを目指します。そして、弱い立場の人々、少数の人々の視点を尊重しながら、地域の絆を再生していきたいと思います。
(将来にツケを残さない市民のための行財政改革)
5つ目の柱は「将来にツケを残さない市民のための行財政改革」であります。
前段で述べました4つの柱に基づく施策を展開していくためにも、そして市政の安定的運営のためにも、行財政改革が必要になります。
私は、当面、次の3つの改革に取り組みます。
1点目は、無駄を排除する改革です。
東久留米市の財政状況は平成20年度決算が示すとおり、単年度収支は赤字、経常収支比率は99.3%という深刻な状態にあります。そして、平成22年度は大幅な歳入減少が見込まれております。これは、小泉内閣時代の三位一体改革による地方交付税の大幅削減、今日まで続く日本経済の低迷の下での税及び税連動交付金の減少などの外的要因と、市税収入の大宗が個人市民税に依拠している本市の税収構造の中にあって、少子高齢化の進行に伴い担税力の減退が続いているという内的要因があります。内外の厳しい現実を客観視すれば、当面、歳入の改善は望めないものと考えます。
したがって、現実に即した歩みから始めていくため、人件費を含めすべての事務事業を総点検して、健全な財政運営を目指します。
2点目は、新しい公共の構築です。
「新しい公共」とは、さきの鳩山首相の所信表明演説で述べられていたとおり、人を支える役割を、「官」と言われる人たちだけが担うのではなく、教育や子育て、まちづくり、防犯や防災、医療や福祉などに地域で関わっておられる方々一人ひとりに参加していただき、それを社会全体として応援しようという新しい価値観であります。
私は、市民のための行革は、行政を、市民とともにつくる「市民的公共」へと変えていく改革でもあると考えます。こうした考えに立って、行政と個人レベルの市民、団体レベルの市民、そして地域の事業者が協働し、公共サービスを拡充して、市民生活の質を向上させていく「新しい公共」の構築に取り組むとともに、「公」が果たす役割を明確にしながら、行政の外部化・市民化を進めたいと思います。また、公契約を含む公共調達のあり方や、民間活力の導入手法、その際の選定基準、進行管理、実施評価の視点などを検討し、あるいは整備をしてまいります。
3点目は、行政組織運営の改善です。
市民の負託に応えられる市役所であるためには、行政組織と職員集団の活性化が不可欠です。そのため、職員一丸となって行政組織運営の改善に取り組みます。この改善に当たっては、とりわけ人材育成を重視いたします。また、事務執行のあり方を総点検して、指揮命令系統、組織運営の中で改善すべきは改善し、必要があれば組織のあり方をも検討したいと考えます。
以上申し上げた3つの改革を通じて、これまでの計画を再点検し、新たに進める民間活力の導入、市民との協働施策の再構築を行って、財政指標を改善し、将来にツケを残さない市民のための行財政を確立してまいります。
(平成22年度予算編成)
最後に、平成22年度予算について申し上げます。
新年度予算については、地方自治法第211条において、普通地方公共団体の長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならないと定められております。
しかしながら、1月20日の市長就任日から、事務手続き上の予算案確定期限の1月29日までの短い間では、予算の精査を行うことは困難であります。
このため、不本意ながら、新年度の行政運営経費について暫定予算を編成し、それによって生み出される時間を活用して本予算を編成することとさせていただきました。
したがって、本定例会には、制度廃止による清算を行うために通年予算とする老人保健特別会計予算を除くすべての会計予算は、原則として4月分の行政運営経費のみを内容とする暫定予算としております。
本予算は、4月にあらためて臨時会を招集し、ご審議をいただくこととさせていただき、その際、平成22年度の施政方針も併せて表明させていただきます。
ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
(おわりに)
閉塞感を漂わせながら大きく変わりつつある今日の日本社会において、わが東久留米市を「歩いて暮らせるまち=コンパクトシティ」にしていくためには、市民の皆様の声を大事にし、市民の皆様と一緒に歩む以外にないと考えております。
ノーベル物理学賞を受賞された京都産業大学の益川敏英教授は、著書『益川流「のりしろ」思考』の中で次のように述べております。
「井の外に置かれた蛙は、それまでとは違った世界があることを知り、『もっと向こうに行ったら、さらに違う世界があるかもしれない』と新たな可能性に気付く。しかもそれだけではなく、『井戸の世界と外の世界の違いは何だろう』と関心を持ち、『あっ、ここが違うんだ。じゃあ、その違いは何によって決まるんだろう』と思考が次第に膨らんでいき、発展していく。思考は止まっていれば固定化されるけど、いったん運動が始まれば持続されていく。自分で問題を発し、その答えを自ら考え、自ら得ていく。そのためにも広い世界に触れ、新しいことを知り、『なぜか?』という問いを常に考えてほしい」と。
私は、この益川教授の言葉を任期4年の間、念頭に置き市民の皆様の声を大事にしながら、市政運営に当たってまいります。
あらためて市民の皆様方、市議会の議員各位のご理解とご協力を切にお願い申し上げ、私の市長就任にあたっての所信の一端の表明とさせていただきます。
平成22年3月1日
東久留米市長 馬場一彦
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